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本日は物流においての基本であるローラコンベヤの解説をします。
目次
■ローラコンベヤって、何のために使うの?
重たい荷物を運ぶとき、人は、持ち上げ移動する。
持ち上げる理由は、床との摩擦を減らしたり、持ち上げることで、運ぶ高さを人の腰の高さに合わせる為である。では、床の摩擦を減らす方法として、持ち上げる以外で考えられることは?
氷の上を滑らせる。水に浮かべる。床をキレイに磨く。などありますが、現実的には、「車輪を付ける」だと思います。台車や荷車に載せることで、自由自在に床の上を走らせることが出来ます。
ただし、全ての荷物に車輪を取付て運ぶことは、非常に手間であり、台車を準備することや使わない時の台車の保管など大変ですね。
そこで考えられたのが、「ローラコンベヤ」です。
ローラコンベヤを床に置き、その上に荷物を載せる。ローラと荷物の摩擦は、非常に小さいので少しの力で、荷物は転がって進みます。一般的に10%以下の力で運ぶことが出来ます。また、荷物を連続して運ぶことが出来ることも台車より便利な理由です。ローラコンベヤの上に荷物を載せる、それも次々と載せることが出来ることで、搬送効率が飛躍的に向上しました。
しかし、良いことばかりではありません。台車や荷車は、その荷物に車輪を付けてしまえば、自由自在に運ぶことができますが、コンベヤは、LINEの形で沢山のコンベヤを設置しなければなりません。そのことについては、以前のブログ(鉄道と飛行機と船とトラック、物流から見た違い)に載せていますが、俗に言うインフラ整備が必要になります。もちろん、専用ラインを設置するのだから効率の高さはお墨付きです。
さて、人が持ち上げる理由の一つが、摩擦の低減でしたが、もうひとつの理由は、「運ぶ高さを人の腰の高さに合わせることが出来る」です。これ、どういう意味でしょうか。
確かに人は、中途半端な高さで作業を行うと、作業性が悪かったり、腰を痛めるなど良くないことが多いです。全てではありませんが、床で作業するよりも、作業台(机など)で作業をする方が、断然疲れにくく、作業性も向上します。重い荷物を運ぶとき、荷物をチョットだけ持ち上げ、腰を曲げたまま運ぶと、一発で腰をやっちゃいますよ。だから必要以上に高く持ち上げ、腰に近い高さで運びます。
ローラコンベヤの上の荷物を押すときも、出来れば人が作業しやすい高さに設置したいですね。
ローラで摩擦力が減ったとしても、力が入りやすい高さで作業できることや、ローラコンベヤに載っている荷物に何か手を加える際にも机の高さぐらいが便利ですね。 ただし、荷物の高さが高いことや落下の危険性が増えるので、その環境に合った、丁度良い高さを考え、選ぶことが重要です。
■ローラコンベヤの種類
コンベヤは、大きく分類すると「フリーコンベヤ」と「駆動コンベヤ」に分かれます。
違いは、荷物に掛ける力を駆動力(主に電気:モータ)に頼っているか・いないかです。
電気を掛けて、モータがローラーを回すことで推進力を得て、荷物が自動で進むコンベヤを駆動ローラコンベヤと呼びます。
ローラ自体が、自力で回転力を持たず、荷物にかかる外力によって、荷物自体が進むコンベヤをフリーコンベヤと呼びます。
モータが回ってローラが回り、荷物が進むことについては、想像しやすいが、フリーコンベヤの「荷物にかかる外力によって、荷物自体が進む」って、何?
それは、簡単に言うと、「人が押す」「滑り台のように転がる」「勢いで進む」「別に押す機械がある」など、荷物に「何かの力」がかかることで、ローラの上を進むコンベヤです。
「人が押す」の何かの力は、人です。
「滑り台」の何かの力は、地球です。万有引力です。
「勢いで進む」の何かの力は、そのコンベヤの手前までに勢い付いている慣性力です。
「別の機械」の何かの力は、例えばプッシャー装置(押す装置)などです。
■駆動ローラコンベヤの種類
駆動ローラコンベヤは、主に駆動の掛け方で分類されます。
「チェン駆動」
モータからの回転力をチェンによって伝達し、チェンがローラーのスプロケットを回し、ローラーが回転する駆動方法です。チェンは、力の伝達力において非常に大きな力を伝えることが出来ます。よって、大きな力を必要とする用途の搬送に最適です。
重たい物を運ぶ例 :パレット積載製品(数百kg~数ton)のコンベヤ 比重の高い製品「丸ベルト駆動」
モータの力でシャフト(丸い棒)を回し、シャフトに掛けた丸ベルトを介して、ローラを回す駆動方法丸ベルトとローラやシャフトの間で滑りが出ることで、必要以上の負荷をモータや荷物に伝えないリミッター機能を持つ
- 荷物が渋滞して、押し合い潰れそうになる場合などに力を逃がすことが出来る。
- 大きな力を必要とする搬送には不向き
- 丸ベルトは、高頻度の回転、停止を伴う搬送には不向き
- 丸ベルトの定期的な交換頻度がチェンなどに比べ早い。
- 構造が簡素なため、価格的優位性もある。
- 比較的軽いダンボールケースの搬送に適する。
「モータローラ駆動」
大容量の汎用ギヤ付きモータを使わず、モータローラと言うローラー内にモータが内蔵された比較的小さい駆動力を使ってローラ自体が回転するコンベヤ。モータローラから前後のローラへ、ベルトなどを使って駆動を伝え、小単位のコンベヤ駆動を複数のモータローラで連動することにより、コンベヤラインを構成する。機器部品として、市販されているモータローラとフリーのローラーをベルトで繋ぐだけでコンベヤラインが組めるため、
- 利便性が高い。
- モータ数が増え電気品の割合が高くなる。
- モータローラの価格が汎用モータに比べ高価であるが構造が簡単になる。
- 汎用モータに比べ、寿命や部品の耐久性が低い
「アキュームローラコンベヤ」
駆動方法は、主にチェン駆動にて回転するローラコンベヤのローラとスプロケットが滑る構造を有することにより、荷物の渋滞で押せ押せ状態になる(ラインプレッシャー)を軽減することが出来る。「0プレッシャーコンベヤ」と呼ばれるものもある。滑る力加減は、ローラ軸のネジを締め込むことで可変する事ができる。ストッパーなどで一時的に荷物が停滞するところなどで使用される。
「Vベルト駆動コンベヤ」
モータからの駆動力をVベルトに伝達し、Vベルトとローラの接触摩擦によってローラを回転させるコンベヤ。Vベルトをローラに押し付けることで回転力を伝達するため、スプロケットなどの無いフリーローラを使用することができ、安価であるが、組立調整等熟練の技術を要する。
【フリーローラコンベヤの種類】
フリーローラコンベヤは、上述の通り「何かの力」によって運ぶコンベヤです。
「人で押すローラコンベヤ」
荷物を人が押すためには、押しやすい高さで設計する必要があります。その荷物の大きさや高さ、安定性などによって、高さや幅を考えましょう。
また、勝手に進んで行かないように、水平に設置することや、手で押すことによる荷物の傾きがローラ・ローラ間に荷物の角がハマり、突っかかる現象などを考慮する必要がある。
「滑り台のようなコンベヤ」
傾斜フリーローラコンベヤと呼びます。
コンベヤを水平よりも傾けることにより、自然に転がり荷物が進むエコロジーなコンベヤですが、勢いが付きすぎる。足りなくて途中で止まる。製品の底面や重さのバラツキで止まる荷物に加速した荷物がぶつかる事などもあり、自然を制御する難しさが見られます。
傾斜角度を大きくすると加速が早くなり、小さくすると加速が小さくなります。
ENDを上り坂にすると、加速した製品を止める役割として使うこともできます。
万有引力を使うので、駆動が要らず、人の手も要らないため、コスト、環境の点で多用したいものだが、搬送物のバラツキが100%搬送の安定に影響するため、駆動コンベヤの制御以上に難しい調整を必要とします。
「勢いで進むコンベヤ」
このコンベヤの前段階で、駆動や傾斜によって勢い(慣性)が付いている荷物を受け入れる
コンベヤ。ある速度を持った荷物を急にストッパで衝突させて停止すると、中の商品が破損したり、転倒することが考えられます。慣性力を徐々に減速し、丁度良い位置で停止する機能もコンベヤの大きな役割です。荷物を最終的に人が取り出すエリアなどに設置されるコンベヤです。
「別の機械で送るコンベヤ」
装置の中で駆動コンベヤを設置することができない場合やクランプしたまま次工程に進めたい装置の搬送面に取り付ける機能として、フリーコンベヤが使われます。
搬送摩擦の低減をしながら、装置としての役割を加える場合の方法です。
【ローラコンベヤの注意点】
ローラコンベヤ設計上の主要ポイント
- 重量 :運ぶものの重さです。最大重量が主に必要です。
- サイズ :運ぶものの 縦×横×高さ それぞれのサイズです。
- 搬送方向 :どちら向きで進むか。
- 材質 :紙、鉄、木、プラ など
- 平面形状 :連続表面かデコボコか。
- 速度 :どのくらいの速さで進むのか
- 処理能力 :1時間に何個供給されるのか。
- 搬送高さ :床から何mmの高さを走るのか
- 機長 :どのくらいの長さ必要か?
- 運用 :どんな動きをするか。
載せたら5秒後に動き出す。あるところで止まる など。
他にも、機械の材質、安全基準、使う部品指定、環境(熱い、寒い、湿度・・)
これら、色々なことを総合的に判断して、ローラの長さや径、ローラとローラの間(ピッチ)、駆動方法、フレーム形状、センサー配置 などを決めていきます。初期の段階で情報が濃いことが、満足できる設備を手にする基本です。
■ローラコンベヤの耐環境性
ローラコンベヤを設置する環境がどのような所かを知ることも重要な情報の一つです。
環境とは・・・
- 温度: 何度のところに設置するのか 常温(0~40℃程度)、寒冷地(冬季が寒い)
暑いところ、冷凍庫、冷蔵庫、炉の近く - 湿度: 結露するか 温度差があるところ(温度の違う部屋のシャッター付近)、釜などの近く湿度を必要とする部屋など
- クリーン度 : クリーンルームやきれいな環境の部屋 粉塵やサビ、摩耗などを嫌う駆動部をカバーし吸引するなど対策が必要
- 水気 :食品衛生環境など水洗い、酸洗などを行うことがあるところ
- 塩基 :海の近くの屋外設置や水産品など 主にサビ対策
- 防爆 :発火性、爆発性があるものの搬送
- 騒音、ノイズ: 静かなところ し~んとしているところに設置
設置する環境は、業界によって感じ方が違います。「普通」って言っても人によって感じ方が違うものです。コンベヤを作る側が、使う人の業界や環境を熟知している訳ではないので、まとめる人が、数値的に、より具体的に表現することが望しい。
■ローラコンベアを使って安定して運ぶためには
ローラコンベヤを使って荷物を運ぶ設備を計画するにあたり、ローラの本数がコストに非常に大きく関わります。ローラの本数を減らせば、ローラとローラの間が広くなり、ガタガタした搬送になってしまいます。
「ローラー径と本数(ピッチ)の決め方」
1本のローラーが受けることの出来る重さは、ローラの径と長さより機械的に割り出せます。
仮に1本のローラで30kg受けることが出来たとしても、ダンボール箱1個を1本のローラで運ぶことは出来ません。安定して流れるように運ぶためには最低でも3本以上で常に支える必要があります。400mmの長さの箱を3点で支える場合、最低でもローラのピッチは、135mm以上必要です。
実際には、箱の偏心度合いや底面形状などを考慮して75mmピッチ程度になると考えるので、1箱を5本程度のローラで受けることになる。1本あたりの支える重量は小さくなり、ローラ径をもっと小さくすることが出来るようになります。ただし、ローラ径は、細くなればなるほど安くなるとは限りません。一般的な流通市販標準品を選定することの方が安くなる場合も多いので、注意が必要です。
ローラの本数がコストに影響することより、ローラ自体の単価を安く抑えることが考えられます。
ローラーコンベヤを使う用途によってローラを選定することで、より最適なコストにあった設備を選択できます。
「安価なローラと高価なローラの違い」
見た目に大きな違いが判りにくいローラ。価格を決める大きな違いは、①ベアリング ②削り ③材質 の3点です。
いかに精度が良く、耐久性の高いベアリングを使うか。ベアリングと言ってもピンキリです。
国内メーカー基準の品質の良いベアリングを使うか、少々ラフな転がりのベアリングを使うかは、運ぶ物や頻度、環境、運用で決めるべきです。たまにコロコロっと取り出す程度の場所に高級なローラは必要ないでしょう。高頻度で高荷重の物の搬送にテキトウなベアリングは使えないと思います。
同様にベアリングをハメ込む精度や真円度も運ぶ物と回転数で変わってきます。
また、上述の環境対策よりステンレス製やアルミ製、メッキ品など選択する必要があります。
■コンベヤ選定
今回は、ローラコンベヤに注目して述べてきました。物流の設備としては比較的一般的なアイテムで、コストパフォ-マンスの高い機器です。ライン構成の一参考になれば幸いです。ローラコンベヤ以外にも、ベルトコンベヤやチェンコンベヤ、スラットコンベヤなど沢山の種類のコンベヤがあります。随時記事を掲載していきたいと思います。