荷物を運ぶ作業に付きものなのが、腰痛です。 今回は、重い荷物と腰の関係を考え、腰を鍛えるよりも、腰を守る工夫を考えていきたいと思います。
目次
■労働災害を考える
労働災害と言うと、働いている間に起こる、交通事故や作業中の事故など突発的な危険要素から受ける被害を想像しがちですが、実際には、同じ姿勢で行う作業や立ち仕事、環境被害や騒音もその因子として取り上げられています。荷役作業(荷物を運搬する作業)では、荷台からの崩落・転落、転倒、動作の反動、巻き込まれ、車両接触や挟まれ事故などが主な労災因子として認識されています。
ちなみに、陸運業における労働災害の75.5%は荷役作業災害です。その14%が動作反動や無理な動作からくる疾患で、その半分が腰痛です。・・・・よって日本の陸運業全体の労働災害の5%が腰痛ということになります。
厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」より荷役作業における物流機械が果たすべき改善項目を探してみました。
■【職場における腰痛予防対策指針2】 作業管理を読み解く
(1)自動化、省力化 腰部に負担のかかる重量物を取り扱う作業、人を抱え上げる作業、不自然な姿勢を伴う作業では、作 業の全部又は一部を自動化することが望ましい。それが困難な場合には、負担を減らす台車等の適切な 補助機器や道具、介護・看護等においては福祉用具を導入するなどの省力化を行い、労働者の腰部への 負担を軽減すること。
(2)作業姿勢、動作ヘ 転倒やすべり等の防止のために、足もとや周囲の安全を確認するとともに、不安定な姿勢や動作は 取らないようにすること。また、大きな物や重い物を持っての移動距離は短くし、人力での階段昇降 は避け、省力化を図ること。
(3)作業の実施体制
イ 作業時間、作業量等の設定に際しては、作業に従事する労働者の数、作業内容、作業時間、取り扱 う重量、自動化等の状況、補助機器や道具の有無等が適切に割り当てられているか検討すること。
ロ 作業標準の見直し 作業標準は、個々の労働者の健康状態・特性・技能レベル等を考慮して個別の作業内容に応じたも のにしていく必要があるため、定期的に確認し、また新しい機器、設備等を導入した場合にも、その 都度見直すこと。
労災の予防に関して、国は、企業にかなり細かく指針を出しているんですね。
では、具体的な対策として
- 人が持って運ぶ最大の重さについて 以前のBLOGで載せました。読んでください。
- 不自然な体勢で作業することについて
- 高いところから低い所へ荷物を積む作業
- 遠い所に手を伸ばし、取り出す作業
- 振り向いて置く作業
荷役(特に積み下ろし作業)は腰痛作業と言ってもよいほど腰痛との関係が深い作業です。
高さが変わるリフターのようなものに載せて、運ぶ時の高さが、ちょうど良くなるように工夫したり、バランサーなど重量を軽減する装置を使うなどチョッとした機械を導入することが考えられます。
しかし、この作業が一定の場所で行われる訳ではなく、作業場各所で作業するため、固定設備で対応することも難しいです。最近だとパワースーツ的な補助装置もありますが、まだまだ庶民に広まらないようですね。
【作業場所を一定のエリアに集中させるメリット】
- 機械化しやすい・・・機械導入する効果が最大限感じられる
- 専任化しやすい・・・色々な作業を行うよりも、専任で行う方が管理しやすく教育もしやすい
- 作業効率が上がる・・・細かい作業と重量作業が交互に発生すると、集中が途切れ、効率が悪い
【作業エリアを集中させるコツ】
(例)パレットの荷物を降ろしてラインに投入するラインを参考に
- コンベヤラインでバラシ後のケースを運ぶ
- フォークリフトでタイムリーに荷繰りしてパレットを入れ替える
- バラシ後のパレットを自動入れ替え出来るようにする。
【作業軽減する方法】
- バランサーを使って省重量化を進める。
- 空パレットを自動で積み付ける。空パレット作業だけでも軽減する。
- すぐ近くにコンベヤを設置する。
- パレットをリフターで高さ補正する。
以上、荷役作業における自動化や設備化がなかなか進まない通り、非常に難しく、人海戦術が一般的な業界です。ただし、21世紀の現在、このような作業を減らす努力を惜しまず行いたい。